固定費から手をつける|お金の整えかた教室・第3回

公共料金の封筒とノートを並べた家計見直しのイメージ

前回の棚卸しで、毎月どこからいくら出ていくかが一覧になりました。第3回はそのリストを持ったまま、固定費に手をつけていきます。なぜ食費より先に固定費なのか、どの順番で触ると疲れないのか、通信費・サブスク・光熱費で今日中に動かせることは何か、そして下がった分をどこへ回すか。ここまでをお伝えします。

のどか

固定費は「一度きりの作業で、来月から毎月効く」いちばん割のいい場所です。

目次

なぜ固定費を先に触るのか

食費や日用品費の節約は、毎月あたらしく努力が必要です。今月2,000円しぼれても、来月また同じだけ気を張らないと同じ金額にはなりません。固定費はその逆で、契約をひとつ変えれば、あとは何もしなくても毎月同じだけ下がり続けます。同じ2,000円でも、固定費で下げた2,000円は年に24,000円、放っておいても続きます。

もうひとつ大きいのは、我慢の量が増えないことです。スマホの契約先が変わっても、使えるデータ量が足りていれば暮らしは何も変わりません。食費を削るときのような「今日はやめておこう」の判断が発生しないので、家計を締めているという実感すらないまま金額だけが下がります。頑張りが要らない場所から片づけるのは、ずるいことではなく、順番として正しいだけです。

そして固定費には、金額が大きいという特徴があります。通信費・光熱費・保険・住居費を合わせると、多くの家庭で手取りの4〜5割を占めます。ここが1割軽くなると、食費を毎日けずるより早く効きます。

固定費の見直しは「一度やれば終わる作業」です。毎月の努力が必要な支出とは、性質からして別物として扱ってください。

手をつける順番の考え方

固定費と一口に言っても、動かしやすさはまるで違います。私はいつも「手間の軽さ」と「元に戻せるか」の2つで並べ替えます。効果額の大きい順ではありません。大きいものほど検討に時間がかかり、途中で力尽きるからです。

項目手間やめたくなったら戻せるかいつ着手
サブスク・使っていない会費数分また入り直せる今日
スマホ・通信費1〜2時間戻せる(手数料は要確認)今週
電気・ガスの契約30分程度戻せる今月
保険数週間戻せないことがある急がない
住居費数か月戻せない急がない

上の2つは失敗しても取り返しがつきます。下の2つは取り返しがつきません。だから上から順に進めます。戻せるものから触る、戻せないものは最後に回す。これが固定費の見直しで唯一おぼえておく原則です。

項目ごとの具体的な手順や比較の見方は固定費見直しの完全ガイドにまとめてあります。この回では、どこから触るかという地図の部分だけつかんでいただければ十分です。

データ使用量を確認するスマホとサブスクの一覧メモ

通信費とサブスクは今日でも動かせる

いちばん先に見るのはサブスクです。前回つくった引き落とし一覧に、名前を見てもすぐ思い出せないものが並んでいるはずです。思い出せないということは、その月は使っていません。動画配信、音楽、クラウドの追加容量、アプリの年額課金、使っていないジムや協会の会費。我が家では3つ解約して月2,400円、年間で28,800円が消えました。解約して困ったものはひとつもありませんでした。

解約時の注意点や、年額課金の見つけ方はサブスク解約の手順で詳しく扱っています。迷ったら、まず一時停止できるサービスから止めてみてください。

次がスマホです。ここは金額の桁が変わる可能性があります。2026年8月時点で、格安SIMの相場はデータ4〜5GBで月1,000〜1,500円前後、20GBで月2,000〜3,000円前後です(NUROモバイルの解説ほか各社比較サイトより。料金やキャンペーンは変わりやすいので、最終的な金額は各社の公式ページでご確認ください)。大手キャリアの大容量プランを2回線持っている家庭なら、月1万円前後の差が出ることもあります。

乗り換えを検討する前に、直近3か月の実際のデータ使用量を確認してください。「無制限だから」と契約していても、実際には月3GBしか使っていない家庭がとても多いです。

ただし、家族間通話が多い、キャリアメールを長年の連絡先にしている、光回線とのセット割で全体が安くなっている——こうした事情がある場合は、乗り換えが必ず得とは限りません。セット割の額まで含めて、家全体の通信費で比べてください。

契約アンペア数を確認する分電盤のブレーカー

光熱費は契約と使い方を分けて考える

光熱費の話になると、すぐに「こまめに消す」「エアコンの設定温度を1度」という話になりがちですが、その前に契約のほうを見てください。使い方の工夫は毎月の努力が要りますが、契約の変更は一度で済みます。

見るところは3つです。契約アンペア数が今の暮らしに合っているか、料金プランが生活時間帯と合っているか、電気とガスをまとめたほうが安いか。とくにアンペア数は、子どもが独立した後や在宅の時間が変わった後も昔のままという家庭が目立ちます。基本料金は使っても使わなくても毎月かかるので、下げれば確実に効きます。ただし下げすぎるとブレーカーが落ちますから、同時に使う家電を思い浮かべながら決めてください。プランごとの比較の仕方は電気代の見直し方で解説しています。

使い方のほうは、金額の大きいものだけで十分です。家庭の電気の使い道はエアコン・冷蔵庫・給湯・照明に大きく偏っています。逆に言えば、待機電力を1Wずつ潰す作業は労力に見合いません。フィルターの掃除と、冷蔵庫に詰め込みすぎないこと。この2つを押さえたら、あとは気にしないでいいと思っています。

光熱費の補助は今も動いています

2026年7〜9月に電気・ガス料金支援が実施されており、8月使用分は電気4.5円/kWh・都市ガス18.0円/m³、7月と9月は電気3.5円/kWh・都市ガス14.0円/m³の値引きです。申請は不要で、契約中の会社を通じて自動的に請求額から引かれます。一般家庭で3か月あわせて5,000円強の軽減が見込まれています。

つまり、この時期の請求額は補助のぶんだけ低く出ています。補助が終わったあとの金額を基準に考えておくと、秋以降に驚かずに済みます。

保険と住居費は急いで決めない

金額が大きいので、いちばん先に手をつけたくなるのがこの2つです。でも、ここは急いで決めるほど後悔しやすい場所でもあります。

保険は、解約すると同じ条件で入り直せないことがあります。年齢が上がっていたり、その間に体調の変化があったりすると、条件が変わるためです。ですから、まずは今入っているものが何を保障しているのかを書き出すところまでで止めておきます。同じような保障が2つ重なっていないか、勤務先の制度や公的な保障ですでにカバーされている部分はないか。そこを整理するだけでも、判断の材料はそろいます。保険の考え方では、その書き出し方を扱っています。実際に減らすか続けるかの判断は、保険会社の窓口や公的な相談窓口など、契約内容を直接見られる相手と話してから決めてください。この記事では踏み込みません。

住居費も同じです。家賃の交渉や住み替えは効果が大きい一方で、引っ越し費用や通勤時間、子どもの学校といった、お金以外の条件が絡みます。更新のタイミングが来たときに落ち着いて考えれば十分間に合います。今この回で決めることではありません。

この2つは、第3回の宿題では「今の内容を把握する」までがゴールです。そこまでできていれば、この回としては上出来です。

下がった分をどこへ回すか

ここが、固定費の見直しでいちばん大事なところかもしれません。固定費が月8,000円下がると、口座には毎月8,000円多く残ります。ところが、行き先を決めていないと、この8,000円はきれいに消えます。少し余裕があるからと外食が増え、少し余裕があるからと買い物の判断がゆるくなる。手取りが増えたときと同じことが起きるだけです。

ですから、下がった金額が分かった時点で行き先を決めます。おすすめは、給料日の翌日に自動で別の口座へ移してしまうことです。手を動かして移す方式は、忙しい月に必ず抜けます。金額は、下がった分をきっちり全部でなくてかまいません。半分を先に移して、残り半分は暮らしのゆとりとして使うくらいが、長く続きます。

我が家では、通信費とサブスクの見直しで月1万円ほど下がったとき、半分の5,000円を別口座へ、残りを「使っていい分」にしました。全部を貯蓄に回した年もあったのですが、その年は途中でしんどくなって崩れました。締めた分をすべて回収しようとすると、結局どこかで反動が来ます。

この「行き先を決める」作業は、第6回で家計の器を分ける話としてもう一度きちんと扱います。今は、下がった分を自動で移す設定をひとつ入れるだけで十分です。

まとめ|前回・次回

第3回は固定費でした。要点は3つです。固定費は一度の作業で毎月効くから先に触ること。戻せるもの(サブスク・通信・光熱費の契約)から順に手をつけ、戻せないもの(保険・住居費)は把握までにとどめること。そして、下がった分の行き先をその場で決めてしまうこと。

全部を今週中に終わらせる必要はありません。サブスクをひとつ解約して、スマホの実際のデータ使用量を確認する。この2つができていれば、第3回の中身は動き出しています。残りは来月でも間に合います。

のどか

私自身、格安SIMへの乗り換えを2年も先延ばしにしていました。実際にやってみたら、面倒だったのは最初の30分だけでした。

前回は通帳とカードを棚卸しする(第2回)で、お金の出口を一覧にしました。次回は第4回で、変動費——食費や日用品費の見方に進みます。固定費を先に片づけておくと、変動費に対する気持ちの余裕がまるで違います。

固定費の見直しは、どのくらいの頻度でやるものですか。

年に1回で十分です。契約の更新月や、家族構成・働き方が変わったタイミングに合わせるとおぼえやすくなります。毎月見直すものではありません。

家族が乗り換えに反対します。どう進めればいいですか。

金額ではなく「何が変わらないか」から説明すると通りやすいです。電話番号もLINEもそのまま、というところが伝わると反応が変わります。まず自分の1回線だけ先に変えて、使い勝手を見てもらうのも手です。

電気の契約を変えると、停電しやすくなったりしませんか。

送電網は同じものを使うため、契約先を変えても電気の品質や停電のしやすさは変わりません。停電時の復旧対応も従来どおり地域の送配電事業者が行います。

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