急須の選び方|毎日お茶をいれる道具を1つ決める

横手の急須と湯呑が並んだお茶の道具

ペットボトルのお茶を買う習慣をやめたいと思ったとき、最初に必要になるのが急須です。ただ、いざ売り場に立つと、陶器・ガラス・鉄、丸い形と平たい形、網の種類まであって、どれを選べばいいのか分かりにくい道具でもあります。この記事では、素材・大きさ・茶こしという3つの軸で急須の選び方を整理し、手入れの実際と値段の目安まで見ていきます。

のどか

今日は、毎日使う「お茶をいれる道具」を1つに決めるお話です。

目次

急須があるとお茶の時間が変わる

急須のいいところは、味そのものよりも「間(ま)」が生まれることだと思っています。お湯を沸かして、茶葉を入れて、少し待つ。この待ち時間が1分ほどあるだけで、台所に立ったまま一息つけます。ペットボトルを開ける動作にはない時間です。

家計の面でも差は出ます。500mlのペットボトル入り緑茶を1本150円として週5本買うと、月におよそ3,000円。いっぽう煎茶の茶葉は100gで1,000円前後の価格帯が広くあり、1回に5g使うとして20回分です。1回で湯呑2〜3杯いれられますから、1杯あたりおよそ20円。同じ量を飲むなら月1,000円ほどに収まります。急須が3,000円だとしても、この差なら数か月で埋まる計算です。

もっとも、節約のためだけに急須を買うと続きません。二煎目、三煎目で味が変わっていくのを面白がれるかどうかのほうが、長く使えるかを決めます。

陶器・ガラス・鉄の急須を並べた素材比較

素材で選ぶ

急須の素材は、味・重さ・手入れのしやすさのすべてに関わります。まず全体像を並べておきます。

素材味の傾向扱いやすさ値段の目安
陶器(常滑焼・萬古焼など)渋みが穏やかになりやすい洗剤は使わない・手洗い2,000〜6,000円
磁器(波佐見焼・有田焼など)香りや味がそのまま出るにおいが移りにくい・食洗機対応品あり2,000〜5,000円
耐熱ガラス素直に出る中が見える・茶渋が目立つ1,500〜3,500円
鉄(南部鉄器の急須)変化は少ない重い・直火不可6,000〜15,000円

価格は店や時期で動きますので、ここは幅として見てください。

陶器

急須といって多くの人が思い浮かべるのは、愛知県の常滑焼に代表される陶器でしょう。赤茶色の朱泥(しゅでい)と呼ばれる土には鉄分が含まれていて、これがお茶の渋みのもとであるタンニンと反応し、口当たりが穏やかになると言われます。産地としても、急須といえば常滑という位置づけが長く続いてきました。

釉薬をかけない土のままの急須は、水気を吸います。だからこそ使い込むほど色が深くなり、いわゆる「育つ」道具になります。同時に、においも吸います。洗剤で洗えないのはこのためです。

毎日同じお茶を飲む人ほど、陶器の急須は味が馴染んでいきます。

半年に一度しか使わない人には、においがこもりやすく向きません。

なお、白い磁器の急須は土がほとんど水を吸わないため、においが移りにくく、ほうじ茶と煎茶を1つで兼ねたい家庭に向きます。同じ焼き物でも性格がかなり違います。普段使いの器の選び方は波佐見焼という普段使いの器でも触れました。

ガラス

耐熱ガラスの急須は、茶葉が開いていく様子が見えるのが一番の魅力です。色の濃さで「そろそろかな」と判断できるので、いれ方に自信がない段階ではむしろガラスのほうが失敗しません。

価格も1,500円台からあり、多くは食洗機に対応しています。茶渋が白く残ると目立ちますが、磁器と同じく酸素系漂白剤でリセットできますから、清潔に保ちやすい素材です。最初の1つとして選ぶなら、扱いやすさの点でガラスか磁器が無難です。

弱点は、落とせば割れることと、冬場に湯温が下がりやすいことくらいです。急須をテーブルに出しっぱなしにして何杯も飲む使い方なら、少し不利になります。

南部鉄器の急須は、見た目の重厚さと保温性で人気があります。ただしここには、誤解されたまま買われやすい点が1つあります。

【鉄の急須では鉄分は摂れません】

南部鉄器の「急須」は、内側にホーロー(琺瑯)加工が施されているものがほとんどです。鉄がお湯に触れないため、使い続けても鉄分は溶け出しません。錆びにくく手入れが楽になる代わりの性質です。

鉄分を目的にするなら、内側が鉄の地肌のままで、直火にかけてお湯を沸かす「鉄瓶」が別にあります。急須は直火にかけられません。

鉄の急須は700g前後になるものもあり、手首の負担は正直に言って小さくありません。高齢の家族が毎日使う道具として選ぶなら、この重さは実際に持って確かめたほうがいいところです。デザインが好きで、来客用に据えて使う——そういう位置づけならよく合います。

大きさと注ぎやすさ

容量は、湯呑の数から逆算するのが確実です。湯呑1杯はおよそ60〜80ml。二人暮らしなら200〜300ml、家族4人で飲むなら400〜500mlが目安になります。

気をつけたいのは、商品ページの容量表示の多くが満水容量だという点です。実際には茶葉が場所を取り、注ぎ口の下までしか湯を入れられませんから、使える量は表示の7〜8割と考えてください。300mlと書かれた急須で、実際にいれられるのは湯呑3杯ぶんほどです。

大きすぎる急須は、少量をいれたときに茶葉がお湯に浸りきらず味が出ません。迷ったら小さめを選ぶほうが失敗が少なく、二人暮らしなら300ml前後で十分足ります。

持ち手は、横に付いた横手型、後ろに付いた後手型、上に弦のある上手型(土瓶)の3種類です。片手で扱えて日本茶に一番合うのは横手型ですが、これは右手で持つ前提でつくられています。左利きの方は左手用の急須も市販されていますので、探してみてください。

そして意外と差が出るのが注ぎ口です。注ぎ終わりに最後の一滴が切れず、テーブルに垂れる急須は毎日のことなので地味に疲れます。売り場で確かめられるなら、蓋と本体の合わせ目にがたつきがないか、注ぎ口の先が薄く仕上げてあるかを見てください。ここが丁寧な急須は、たいてい注ぎ口も切れがいいものです。

蓋の穴が注ぎ口の反対側にくるように蓋を回すと、湯切れがよくなります。

蓋を開けた急須の細かい茶こしと茶葉

茶こしの目の細かさ

ここが、飲むお茶の種類によって答えが変わる部分です。茶こしはおおむね次の4種類に分かれます。

  • ささめ:本体と同じ土に細かい穴を並べたもの。金気(かなけ)が出ず、玉露や高級な煎茶に向く
  • 帯網・セラメッシュ:胴の内側をぐるりと囲む陶製の網。茶葉が広がりやすい
  • ステンレスメッシュ(かご型):目が細かく、取り外して洗える
  • 底網:底の一部だけに網があるもの。安価だが茶葉が広がりにくい

判断の基準ははっきりしています。スーパーで売られている緑茶の多くは深蒸し茶で、茶葉が細かく粉状の部分を多く含みます。目の粗い急須ではこれが網に詰まり、注ぎが遅くなり、湯呑に粉が落ちます。ふだん深蒸し茶を飲むなら、細かいステンレスメッシュか帯網を選ぶのが正解です。

逆に、葉の形が残った普通煎茶や玉露を飲むなら、ささめの急須で味の出方が変わるのを楽しめます。ここは価格の高い安いではなく、家で飲むお茶に合わせるだけの話です。

もう1つ、口の広さも見ておいてください。手が入る広さがあれば、茶殻を捨てるのも洗うのも一気に楽になります。平たい形の急須が使いやすいと言われるのは、味の面だけでなくこの理由も大きいと思います。

手入れと保管

急須の手入れは、拍子抜けするほど簡単です。使い終わったら茶殻をすぐ捨て、湯か水でさっとすすぎ、乾かす。基本はこれだけです。

ポイントは3つあります。1つめは、土もの(釉薬のかかっていない陶器)に洗剤を使わないこと。素地が洗剤のにおいを吸って、次に飲むお茶に出てしまいます。磁器・ガラス・ホーローの内側なら洗剤を使って構いません。

2つめは、茶殻を入れっぱなしにしないこと。湿った茶葉は温かいうちからいたみはじめます。夜のうちに捨てておくのが、いちばん効くひと手間です。

3つめは乾かし方です。洗ったあと蓋を載せたまま置くと、中に湿気がこもってにおいの原因になります。蓋を外し、本体を伏せずに口を上に向けて自然乾燥させてください。網の目に詰まった細かい茶葉は、使い古しの歯ブラシで裏側から軽く押し出すと落ちます。

茶渋が茶色く残ってきたら、磁器とガラスは酸素系漂白剤に浸けてリセットできます。常滑焼などの土ものは、その茶渋こそが味の一部ですから、こすり落とす必要はありません。ここは、きれいにしすぎないほうがいい数少ない台所道具です。

値段の目安

毎日使う1つを選ぶなら、2,000〜4,000円が現在の中心価格帯です。この範囲で、常滑焼や萬古焼の量産品、耐熱ガラス、食洗機対応の磁器まで一通り選べます。長く使う道具としては、ずいぶん手の届きやすい部類だと思います。

5,000〜10,000円になると、窯元の名前が入ったものや、ささめの穴が非常に細かく仕上げられたものが並びます。作家ものはここから上で、1万円を超えていきます。南部鉄器の急須も同じくらいの帯です。

では100円ショップの急須はどうかというと、お茶を飲む習慣が続くかどうかをまず試すには十分です。ただ、注ぎ口の切れと網の細かさは価格なりで、深蒸し茶を毎日いれる用途には力不足でした。数か月使ってみて「これは続く」と分かってから、3,000円台の一本に移る——その順番で構いません。

価格や在庫は店舗と時期で変わります。産地や作りの見分け方は、シリーズの入口である安物買いをやめるという節約で基準としてまとめています。

まとめ|1杯いれる時間がゆとりになる

決め方をひとことにすれば、ふだん飲むお茶に茶こしを合わせ、湯呑の数に容量を合わせ、あとは好きな見た目を選ぶ。この順番です。素材は最後で構いません。手入れが続く自信がなければ磁器かガラス、味の変化を楽しみたいなら常滑焼の陶器、と分けるだけで十分です。

完璧な一本を探し当てる必要はありません。3,000円前後の使いやすい急須が1つ台所にあれば、お茶の時間はもう成立します。あとは飲みながら、自分の好みがだんだん分かってくるはずです。

のどか

うちでは、夕方に一度お湯を沸かす時間が、いつのまにか夫と話す時間になりました。

急須は洗剤で洗ってはいけないと聞きましたが本当ですか?

釉薬のかかっていない土の急須に限って本当です。素地が洗剤のにおいを吸い込み、お茶の味に出てしまいます。湯ですすいで乾かすだけで足ります。磁器・ガラス・内側がホーロー加工の鉄急須は、洗剤を使って問題ありません。

急須に入れっぱなしのお茶は飲めますか?

時間が経つと渋みが強くなり、常温で長く置いたものは衛生面でもすすめられません。飲みきれる量だけいれて、余ったら湯呑や別の容器に移し、茶殻はその都度捨ててください。

鉄の急須を使えば鉄分は摂れますか?

摂れません。南部鉄器の急須は内側にホーロー加工が施されており、鉄がお湯に触れないためです。鉄分を目的とするなら、内側が鉄の地肌で直火にかけられる「鉄瓶」が別の道具として用意されています。

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素材の詳しい特性や製品ごとの仕様は、購入前に各メーカーの公式情報でご確認ください。

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