家計が崩れる月は、たいてい前もって分かっています。車検、保険の年払い、帰省、入学や進級。どれも突然やってくるように感じますが、カレンダーを1年分ひらけば、ぜんぶ今日の時点で見えているものばかりです。この第11回では、1年分の家計を先に見わたして、崩れる月をあらかじめ計画に入れておく手順をお伝えします。
のどか今日は、まだ来ていない1年をひととおり眺めてみます。
1年分を先に見ておくと慌てない
第2回から第10回までは、毎月くり返し起きることを整えてきました。引き落としの棚卸し、固定費、食費、先取り貯金、口座分け。ここまでで、平常運転の月はだいたい落ち着いているはずです。それでも年に何度か「今月だけ足りない」が起きるのは、月単位で家計を見ているからです。
家計は、12か月ぶんをひとつのまとまりとして見ると景色が変わります。たとえば我が家の場合、5月に自動車税、8月に帰省、11月に車の任意保険の年払い、12月に灯油とお歳暮が重なります。この4か月だけで、平常月より合計20万円ほど多く出ていきます。月ごとに見れば「今月は特別だった」で終わりますが、1年で見れば毎年決まって起きることです。
年間計画といっても、12か月ぶんの予算を細かく組む必要はありません。やることは、いつ・何に・いくら出ていくかを先に置いておくこと、それだけです。金額が読めない項目は去年の実績で構いません。正確さより、抜けがないことのほうが効きます。
年間計画の目的は、支出を減らすことではなく、驚かないことです。


カレンダーに固定費と特別費を置く
紙でもスプレッドシートでも、家計簿アプリの年間表でも構いません。縦に1月から12月、横に「固定費のうち月払い以外」「特別費」「収入の増減」の3列だけあれば足ります。項目を増やすほど続かなくなるので、最初はこの3列で十分です。
書き方の細かい手順と、我が家で使っている年間カレンダーの形は固定費カレンダーのつくり方にまとめています。ここでは、埋める順番だけをお伝えします。
毎月の引き落としは飛ばして構いません。1年に1〜2回しか出てこない引き落としだけを拾って、その月に書き込みます。第2回の棚卸しで1年分の明細を見ていれば、そこから写すだけで終わります。
帰省、旅行、七五三や入学、家電の買い替え予定など、請求書が届かない出費を月の欄に足します。金額はざっくりで構いません。
賞与のある世帯は支給月、変動収入なら例年少ない月に印をつけます。多い月ではなく、少ない月に印をつけるのが大事なところです。
合計が平常月より2万円以上多い月を探します。その月が、1年のうちで気をつける月です。
ここまでで、たいてい1時間もかかりません。埋まらない欄があっても、途中で止めて構いません。空欄のまま貼っておくほうが、完璧な表を作って引き出しにしまうよりずっと役に立ちます。
更新月と年払いを書き出す
年払い・半年払いになっているものは、月払いより割安な代わりに、家計簿の上ではほぼ見えなくなります。うっかり忘れやすい代表格は次のあたりです。
| 種類 | よくある時期 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 自動車税・軽自動車税 | 毎年5月 | 納付書が届く月と納期限 |
| 車検 | 2年ごと(新車は初回3年) | 車検証の満了日の月 |
| 火災保険・自動車保険 | 契約日による | 満期日と、年払いか月払いか |
| 通信の契約更新 | 契約から2年前後 | 違約金の有無と更新月 |
| 年払いのサブスク | 申し込んだ月 | 自動更新日と解約の締切 |
| 固定資産税 | 春に通知、年4回払いが基本 | 一括か分割か、納期の月 |
税金や保険料の納期は自治体や契約によって違うので、手元の納付書と保険証券の日付をそのまま写すのが確実です。制度や料金プランの詳細は、2026年8月現在の各社・各自治体の案内で最終確認してください。
更新月が分かったら、その2か月前の欄に「見直しを考える月」と一言書いておきます。第9回でお伝えした見直し月間は、この年間カレンダーがあると置き場所がすぐ決まります。
帰省や行事のある月を見込んでおく
請求書の来ない出費のほうが、家計を大きく揺らします。帰省の交通費、法事、お祝い、子どもの行事、来客の多い時期の食費。第5回でお伝えした特別費が、そのまま年間カレンダーの中身になります。線引きや積み立て額の決め方は第5回・特別費という落とし穴を見返してみてください。
金額は、去年のレシートや明細から拾うのがいちばん早い方法です。我が家は帰省が年2回で、交通費と手土産と外食を合わせて1回あたり4万円前後でした。これを知らずに毎年「今年は使いすぎた」と反省していた頃と比べて、支出そのものは変わっていません。変わったのは、8月の家計簿を見て落ち込まなくなったことです。
行事の多い月には、あわせて「その月にやらないこと」も決めておくと動きやすくなります。帰省のある8月は日用品のまとめ買いをしない、12月は外食を1回に絞る。減らすのではなく、時期をずらすだけで山は低くなります。


貯める目標は金額より用途で決める
年間計画というと「今年は100万円貯める」と決めたくなりますが、金額だけの目標は途中で意味が薄れていきます。数字に達しているかどうかしか見なくなり、少し足りない月が続くと、そこで気持ちが切れてしまうからです。
続いている家庭に共通しているのは、貯める先を用途で分けていることです。「1年後の車検代に12万円」「家電がいつ壊れてもいいように20万円」「使いみちを決めない予備に月1万円」。用途がはっきりしていると、貯まっているお金を取り崩すときに迷いません。車検代として貯めたお金を車検で使うのは、失敗ではなく計画どおりです。
順番としては、先に用途つきの目標を置き、残った余力を「使いみち未定」に回します。手元の口座をどう分けるかは第7回でお伝えしたとおりで、増やしすぎないのが長く続けるコツです。生活費・貯める・特別費の3つに、用途はメモで足りることがほとんどです。
なお、貯めたお金をどこに置くか——預金のままにするか、他の方法を考えるか——は、この教室では扱いません。金融商品の選択は家庭ごとの事情で大きく変わるため、必要になったときに公的な相談窓口や専門家に相談してください。ここでお伝えできるのは、使う予定が1年以内にあるお金は動かさずに置いておく、という一点だけです。
計画どおりにいかない月をあらかじめ用意する
年間計画がうまくいかない最大の理由は、計画が細かすぎることです。12か月すべてを予定どおりに走らせようとすると、1か月ずれただけで全部が崩れたように見えてしまいます。
そこで、はじめから調整用の月を2つ決めておきます。予定の少ない月を選んで、その月は貯金額を減らしてもいい、前月のはみ出しをここで吸収していい、という位置づけにします。我が家は6月と10月をその役にしています。行事も年払いもなく、光熱費も高くない月だからです。
調整用の月は、多い月の直後ではなく、少し離れた静かな月に置くと機能します。
もうひとつ、金額の逃がし方も先に決めておきます。予定より2万円足りなかったとき、どこから出すか。特別費の積み立てから出すのか、その月の貯金を止めるのか、翌月の食費で調整するのか。順番を決めておけば、足りない月に慌てて考えずにすみます。
決めておくと迷わない3つ
① 調整用の月(年2か月)
② 足りないときにどこから出すか、その順番
③ 計画を止めていい状況(家族の入院、失業、災害など)
③は、書いておかないと自分を追い込みやすいところです。予定外のことが起きた年は、年間計画をいったん脇に置いて構いません。1年の計画は、暮らしを守るための道具であって、守るべき約束ではありません。
来年の自分に申し送りを残す
1年の計画でいちばん値打ちがあるのは、実は年末に残すメモのほうです。今年やってみて分かったことを書き留めておけば、来年は同じ迷いをせずに始められます。
残しておくのは、次の3つだけで足ります。実際の金額(見込みと違った項目)、時期のずれ(思っていたより早かった・遅かった支払い)、そして来年はやめることです。「今年の帰省は手土産を減らした、来年もこれでいい」「12月の予算は2万円足りなかった」。ひとことずつで構いません。
書く場所は、年間カレンダーの余白がいちばんです。別のノートに書くと、翌年ひらくのを忘れます。同じ紙の上に、計画と結果と反省が並んでいる状態をつくっておくと、来年の1月にそれを見るだけで計画づくりが終わります。
3年ぶん貯まると、我が家のように「5月と11月と12月が重い」という自分の家の癖が、はっきり形になって見えてきます。ここまでくれば、年間計画は毎年ゼロから作るものではなくなります。
まとめ|前回・次回
1年分の家計計画は、12か月の予算を組むことではなく、重い月を先に知っておくことです。カレンダーに年払いと特別費を置き、貯める目標は用途で決め、調整用の月を2つ用意しておく。それだけで、崩れる月は「想定内の月」に変わります。
前回の第10回・家族とお金の話をするで数字を家族と共有できていれば、この年間カレンダーは冷蔵庫に貼っておくだけで役目を果たします。次回の第12回は、この教室の最終回です。



私は年末に来年のカレンダーを広げるのが、いつのまにか一年の楽しみになりました。モカが紙の上に座ってくるので作業は毎回中断しますが、それも含めて年中行事です。
年間計画は、埋まらない欄があっても構いません。重い月が3つ分かっていれば、今年はもう十分です。制度や料金の詳細については、各社・各自治体の公式案内で最新の内容をご確認ください。








