先取り貯金の仕組みまでつくると、次に出てくるのが「よけたはずのお金が、いつのまにか減っている」という問題です。原因はたいてい意志の弱さではなく、置き場所が一緒であること。この記事では、口座を役割で分ける考え方と、3つに分けるときの基準、増やしすぎたときに起きること、使っていない口座のたたみ方までをお伝えします。
のどか今日は通帳の枚数ではなく、お金の住所を決める話です。
口座を分けると管理はぐっと楽になる
ひとつの口座に給料が入り、そこから家賃も電気代も食費も出ていき、残りが貯金。この形だと、残高を見ても「使っていいお金がいくらか」が分かりません。残高10万円のうち、来週引き落とされる家賃が7万円かもしれないからです。判断のたびに引き落とし予定を思い出す必要があり、その手間が続かなさにつながります。
口座を役割で分けると、この計算が要らなくなります。生活費の口座に3万円残っていれば、月末まで使えるお金は3万円。それ以上でもそれ以下でもありません。残高がそのまま判断材料になるのが、分ける最大の利点です。家計簿をつける気力がない月でも、口座の残高を見るだけで走行状況が分かります。
もうひとつは、貯金が減りにくくなること。同じ口座にあるお金は、心理的にどうしても「まだある」と見えます。別の口座、それも普段使うカードや引き落としと紐づいていない口座に移してしまえば、使うには一手間かかります。この一手間が、月に何度かの衝動を止めてくれます。
分けるのは節約のためではなく、毎回の判断を減らすためです。


まずは3つに分けてみる
分け方に正解はありませんが、最初は3つで十分です。生活費・貯める・特別費。この3つは目的も動くタイミングも違うので、混ぜると必ず取り合いになります。逆に言えば、この3つさえ分かれていれば、あとは細かくしなくても回ります。
| 口座 | 入るお金 | 出るお金 | 動く頻度 |
|---|---|---|---|
| 生活費 | 給与 | 固定費の引き落とし・食費・日用品 | 毎日〜毎月 |
| 貯める | 先取り貯金 | 原則なし | 月1回 |
| 特別費 | 毎月の積み立て | 車検・帰省・家電の買い替えなど | 年に数回 |
生活費の口座
給与が振り込まれ、そこから家賃・光熱費・通信費・カードの引き落としが出ていく口座です。すでに使っている口座をそのまま充てるのがいちばん手間がかかりません。新しく作って引き落とし先を全部変更する作業は、それだけで数週間かかります。
この口座に置いておくのは、1か月分の支出+2〜3万円のゆとりで十分です。給料日前に残高がぎりぎりになるのが不安なら、ゆとりの額を少し厚くしてください。ここに何十万円も寝かせておくと、結局「まだある」感覚が戻ってきます。
貯める口座
第6回でつくった先取り貯金の受け皿です。この口座で守ってほしい条件はひとつだけ、キャッシュカードとネット振込の出口をふさぐこと。カードを作らない、作ったなら自宅の引き出しにしまう、ネットバンキングの振込限度額を下げる。どれかひとつで効果があります。
金融機関は、生活費とは別のところに置くほうが実感が出ます。ネット銀行でも地方銀行でも構いません。ここでいちばん大事なのは金利の高さではなく、うっかり引き出せないことです。
特別費の口座
車検、帰省、固定資産税、家電の買い替え。年に数回だけ出ていく大きな支出のための口座です。第5回でお伝えしたとおり、特別費は毎月の家計を崩す最大の犯人で、ここを別建てにできると1年の見通しが一気に安定します。
特別費の一覧をまだ作っていない方は、先にそちらから進めてください。金額が分からないと、毎月いくら積むかも決められません。
なお、貯める口座と特別費の口座を1つにまとめる方法もあります。その場合は「このうち◯万円は特別費」と手元にメモしておけば運用できます。口座を増やす手間と、頭で管理する手間、どちらが自分に楽かで選んで構いません。
増やしすぎると管理しきれなくなる
分けると楽になるなら、旅行用・教育費用・車用と細かく分けたくなります。ところが口座が6つ7つになると、今度は口座間の移動そのものが仕事になります。どこにいくらあるか把握するのに、5行の残高を足し算する。月末にそれをやる気力が残っているかどうかで、この仕組みは続くかどうかが決まります。
私が家計の相談を受けてきて、続く人と続かない人の差がはっきり出るのがここです。続いている家庭は、たいてい3つか4つで止めています。目的別に細かく分けたい気持ちは、口座を増やすのではなく、1つの口座の中を「旅行20万・車検10万」とメモで分ける形で満たすほうがうまくいきます。
口座を1つ増やす前に、既存の口座のメモで代用できないか確かめてください。
もうひとつ、口座を増やしすぎると家族が分からなくなります。万が一のとき、配偶者が「どこの銀行に口座があるか」を把握できない状態は避けたいところです。数を絞ることは、そのまま伝わりやすさにもなります。


使っていない口座をどうするか
分ける話をすると、必ず出てくるのが「昔の口座が3つ残っている」問題です。学生時代のアルバイト先で作った口座、転職前の給与口座。残高が数千円のまま眠っている口座は、放っておいて得はありません。
理由は2つあります。ひとつは手数料です。近年、一定期間取引のない口座に管理手数料をかける銀行が増えました。三菱UFJ銀行は2021年7月以降に開設した普通預金口座で2年以上未利用の場合に年1,320円、PayPay銀行も2年以上未利用の口座を対象に年1,320円を新設しています(2026年8月現在。対象となる口座の条件や除外条件は銀行ごとに違います)。残高数千円の口座なら、数年で消えてしまう額です。
もうひとつは休眠預金です。2009年1月1日以降の取引から10年以上、入出金などの異動がない預金は「休眠預金等」として預金保険機構に移管されます。ただし移管後も権利が消えるわけではなく、取引のあった金融機関の窓口で引き出せます。通帳や届出印、本人確認書類を持って相談してください。
使わないと決めた口座は、思い切って解約するのがすっきりします。
通帳やアプリで直近1年の入出金を見て、公共料金・サブスク・保険料などの引き落としが残っていないか確認します。残っていれば先に引き落とし先を変更します。
通帳、キャッシュカード、届出印、本人確認書類。印鑑が分からない場合も窓口で手続きできるので、その旨を伝えて相談します。
残高はその場で受け取れます。ネット銀行はアプリやサイトから解約できることが多く、残高を他行へ移してから手続きします。
なお、給与振込や公共料金の実績があると未利用口座管理手数料の対象から外れる銀行が多く、たまに動かしていれば問題になりません。すべての口座を今すぐ整理しなくても大丈夫です。
1,000万円を超えたときだけ気にすること
預金保険制度(ペイオフ)で保護されるのは、1金融機関あたり元本1,000万円までとその利息です。同じ銀行の別支店・別口座に分けても合算されるため、分散するなら「別の金融機関」にする必要があります。この話が関係してくるのは、1つの銀行の預金合計が1,000万円を超えてからです。
家計簿アプリと組み合わせると手間が減る
口座を分けたあとに面倒なのは、残高の確認です。3つの口座をそれぞれのアプリで開くのは、それだけで続かない理由になります。家計簿アプリに口座を連携させておけば、1画面で3つの残高が並びます。月末にやることは、その画面を1回見るだけです。
アプリを使うと、貯める口座が増えていく様子もグラフで見えます。数字が右肩上がりに伸びる形は、続けるうえで思った以上に効きます。無料版でも連携数の上限内であれば十分に足ります。
アプリを使わない場合は、月末に手帳へ3つの残高を書き写すだけでも構いません。大事なのは、全体をひとつの画面(または1ページ)で見る習慣のほうです。
まとめ|前回・次回
口座を分けるのは、貯金の額を増やす技ではなく、迷う回数を減らす仕掛けです。生活費・貯める・特別費の3つ。今日できるのは、貯める口座のキャッシュカードを財布から抜くことだけでも十分です。全部を今週中に終わらせようとしなくて構いません。ここまでやれば、残りは半年かけてゆっくり整えても遅くありません。



我が家は特別費の口座を作った年から、車検の月に慌てなくなりました。
→ 前回:先取り貯金の仕組みをつくる|お金の整えかた教室・第6回
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