お金を整えるという考え方|お金の整えかた教室・第1回

開いた家計ノートとペン、コーヒーカップ

家計管理と聞くと、レシートを一枚残らず記録して、一円単位で合わせる作業を思い浮かべる方が多いようです。けれど、家計を整えることの本質はそこにありません。この記事から始まる全12回の「お金の整えかた教室」では、家計簿の付け方ではなく、お金の流れそのものを整える順番をお伝えします。第1回では、なぜ整えるだけで暮らしが楽になるのか、正しいやり方が一つではない理由、そして12回で進む道すじを見ていきます。

のどか

まずは全体の地図を広げるところから始めましょう。

目次

家計を整えると増えなくても暮らしは楽になる

家計の悩みは「収入が足りない」という形で表れます。でも実際に家計簿を見せていただくと、足りないのではなく、お金がどこへ行ったか分からないことが不安の正体だった、というケースがかなりあります。使途不明金が月に一万円あるだけで、人は自分の家計を信用できなくなります。

お金の流れが見えている家計は、同じ手取りでも精神的な負担がまるで違います。支出の内訳が分かっているだけで、判断の速さが変わります。 旅行に行こうかと迷ったとき、今月あといくら動かせるかが分かっていれば、悩む時間そのものが要らなくなるのです。逆に分かっていないと、使っても不安、我慢しても不満、という状態が続きます。

我が家では、夫と二人暮らしの家計を長く記録してきました。手取りが増えた年より、支出の置き場所を決めた年のほうが、はっきりと残るお金が増えています。特に大きかったのは固定費の見直しで、通信費と電気の契約を変えただけで月に5,000円前後の差が出ました。年間にすれば6万円です。同じ金額を節約で捻出しようとすると、食費や日用品で毎月耐え続けることになります。整えるほうが、はるかに楽なのです。

家計管理の目的は我慢を増やすことではなく、判断に迷わない状態をつくることです。

正しい家計管理に決まった型はない

「正しい家計管理」を検索すると、袋分け、家計簿アプリ、費目を細かく分ける方法、逆にざっくり三分割する方法と、まったく違うやり方が並びます。どれが正解か迷ってしまいますが、結論から言えば、全世帯に当てはまる唯一の正解はありません。

理由は単純で、家計の条件が世帯ごとに違うからです。収入が毎月一定の人と、月によって上下する人では、予算の立て方が変わります。現金中心の人とキャッシュレス中心の人では、支出を把握するタイミングが変わります。子どもがいる家庭は教育費という将来の大きな山を織り込む必要があり、一人暮らしなら自分の判断だけで動かせる分、仕組みは軽くて済みます。

続く形は人によって違う

長く家計を見てきて感じるのは、続く人と続かない人を分けるのは意志の強さではないということです。続かなかった人のほとんどは、最初に難しすぎる方法を選んでいます。費目を15個に分けた家計簿、毎日の入力、月末の集計。どれも正しい方法ですが、正しさと続けやすさは別物です。

逆に何年も続いている人は、自分の性格に合った雑さを持っています。レシートを溜めない人は袋分けが向いていますし、記録が苦手な人は口座とカードを絞って明細をそのまま家計簿代わりにしています。ですからこの教室では「この方法が正解です」という提示はしません。選択肢と、選ぶときの判断材料をお渡しします。

12枚の番号入りカードが順に並ぶ様子

この教室で進む12回の道すじ

全12回は、効果が出やすい順に並べてあります。最初に現状を知り、次に大きな固定費、その後に日々の変動費、最後に仕組み化と家族の合意という流れです。この順番には理由があります。多くの人が最初に手をつけたがる食費は、労力のわりに削れる幅が小さく、しかも毎日努力が必要だからです。

第2回 通帳とカードを棚卸しする

今どこにいくつ口座があり、カードは何枚動いているか。ここを把握しないまま予算を立てても、抜け落ちた引き落としに毎月驚くことになります。使っていない口座の整理も、この回で片付けます。第2回 通帳とカードを棚卸しする

第3回 固定費から手をつける

通信費、電気・ガス、保険、サブスク。一度手を動かせば翌月から自動で効き続けるのが固定費です。金額の大きい順に並べて、上から検討していきます。第3回 固定費から手をつける

第4回 食費と変動費を整える

食費は削るのではなく、上限を決めて回す発想に切り替えます。日用品や交際費など、月ごとにばらつく支出の扱い方もここで。第4回 食費と変動費を整える

第5回 特別費という落とし穴

家電の買い替え、車検、帰省、冠婚葬祭。毎月は出ないけれど確実に来る支出です。ここを月々の予算に入れていないために、赤字だと思い込んでいる家庭がとても多いところです。第5回 特別費という落とし穴

第6回 先取り貯金の仕組みをつくる

余った分を貯めるのではなく、先に取り分けて残りで暮らす形に変えます。無理のない金額の決め方と、自動化の手順を扱います。第6回 先取り貯金の仕組みをつくる

第7回 口座を役割で分ける

生活費、貯める用、特別費用。口座に役割を持たせると、残高を見ただけで状況が分かるようになります。第7回 口座を役割で分ける

第8回 キャッシュレスとの付き合い方

カードやコード決済で家計が見えなくなる問題への対処です。支払い方法を減らすこと、締め日と引き落とし日のずれをどう扱うかを整理します。第8回 キャッシュレスとの付き合い方

第9回 家計の見直し月間をつくる

毎月あれこれ考えるのをやめて、年に一度か二度だけ本気で見直す日を決めます。普段の負担を軽くするための回です。第9回 家計の見直し月間をつくる

第10回 家族とお金の話をする

一人で頑張る家計管理はいつか止まります。責めない切り出し方と、共有する範囲の決め方をお伝えします。第10回 家族とお金の話をする

第11回 1年の家計計画を立てる

12か月分の収支を一枚に並べて、どの月が苦しいかを先に知っておきます。ボーナスや大きな出費の置き場所もここで決めます。第11回 1年の家計計画を立てる

第12回 整えたあとの暮らし

整った家計をどう維持するか、そして浮いたお金を暮らしのどこに使うか。最終回は、節約の先にある使い方の話です。第12回 整えたあとの暮らし

通帳とクレジットカード、給与明細を並べた様子

はじめる前に用意しておくもの

身構える必要はありません。次回の棚卸しに必要なのは、家にあるものだけです。買い足すものはありません。

  • 通帳、またはネット銀行のログイン情報
  • 使っているクレジットカード・コード決済アプリの一覧
  • 直近1〜2か月分の給与明細
  • 書き出す紙とペン(アプリでも構いません)

家計簿アプリを先に入れる必要はありません。道具を選ぶのは、自分の家計の形が分かってからで十分です。 入れ物を先に決めてしまうと、その入れ物に合わせて家計を無理やり分類することになりがちです。順番が逆になると、たいてい途中で嫌になります。

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この教室では、投資や保険商品の選び方は扱いません。支出を整える話に絞ります

資産運用や保険の見直しは、家計の土台が整ってから、金融機関や専門家に相談して判断してください

全部やらなくても効果は出る

12回と聞くと長く感じるかもしれませんが、全部やり切ることを目標にしないでください。実際、第2回と第3回だけで、家計の手応えのかなりの部分は変わります。 現状を把握して固定費を一度見直す。それだけで月に数千円単位の差が出て、しかもその効果は翌月以降ずっと続きます。

残りの回は、そこから先を細かくしたい人のためのものです。口座を分けるのが面倒なら分けなくていいし、家計簿が続かないなら、月末の口座残高だけメモする形でも家計管理として成立します。記録は目的ではなく、判断するための材料にすぎません。

頑張りすぎる方ほど、細かく管理できていない自分を責めてしまいます。けれど、支出の大枠が見えていて、毎月少しでも残っているなら、その家計はもう十分うまくいっています。ここから先は好みの問題です。

まとめ|次回・第2回で通帳とカードを棚卸しする

正しい家計管理に決まった型はなく、あるのは自分の暮らしに合う型だけです。目指すのは一円まで合った家計簿ではなく、お金の流れが見えていて、使うときに迷わない状態です。そのために、効果の大きい順で12回を進んでいきます。

次回は最初の一歩として、通帳とカードの棚卸しをします。用意するのは通帳とカード類の一覧だけ。全体像が見えると、それだけで気持ちがずいぶん軽くなります。第2回 通帳とカードを棚卸しするへ進んでください。

のどか

長く家計を見てきましたが、最初に全体を眺めた人ほど、その後が続きます。

家計管理は何から始めればいいですか?

節約ではなく、現状の把握からです。口座とカードを書き出して、毎月の引き落としを一覧にするところから始めてください。何にいくら出ているか分かって初めて、どこを削るかの判断ができます。

家計簿が続きません。つけないと家計管理はできませんか?

できます。毎月同じ日に口座残高をメモするだけでも、増えているか減っているかは分かります。支払い方法を数個に絞れば、明細そのものが家計簿の代わりになります。細かい記録は、原因を突き止めたい月だけで十分です。

夫婦のどちらが家計を管理するべきですか?

得意なほうで構いませんが、片方が全部を抱える形はおすすめしません。管理する人を決めたうえで、残高と大きな支出は二人で見られるようにしておくと長続きします。詳しくは第10回で扱います。

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