保険料は、気づけば何年も同じ金額が引き落とされ続けている固定費です。この記事では、保険そのものの良し悪しではなく、見直しに入る前に家計側で整理しておくことを順番にまとめます。今払っている総額の出し方、加入の目的の思い出し方、公的な制度でカバーされる範囲、そして相談窓口をすすめられたときの心構えまでを扱います。
さきわが家も、契約内容をきちんと見たのは加入から7年後でした。


保険は毎月いくら払っている?
見直しの話は「どの保険がいいか」から始まりがちですが、最初にやることは金額の把握です。生命保険文化センターの2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」では、2人以上の世帯の年間払込保険料は平均35.3万円でした。月に直すと約2.9万円。10年続けば350万円を超える固定費です。スマホ代や電気代の見直しに比べて話題になりにくいわりに、金額の桁は大きいところです。
やっかいなのは、保険料が複数の口座・複数の引き落とし日に散らばりやすいこと。夫の給与口座から生命保険、私の口座から医療保険、子どもの共済は年払いで別の月に一括、というふうになっていると、月いくら払っているかが誰にも見えていない状態になります。まずは証券(契約内容のお知らせ)と通帳を並べて、一枚の表にしてしまうのが早いです。
わが家(夫婦と中学3年の息子、小学3年の娘)の場合は、こんな並びになりました。
| 契約 | 払い方 | 月あたり |
|---|---|---|
| 夫の収入保障保険 | 月払い | 3,200円 |
| 私の医療保険 | 月払い | 2,100円 |
| 子ども2人の共済 | 月払い | 2,000円 |
| 合計 | — | 7,300円(年87,600円) |
年払いや半年払いの契約があるときは、必ず12で割って月あたりに直してから並べてください。年払いは家計簿上「その月だけの特別な出費」に見えてしまい、固定費としてカウントされないまま何年も過ぎることがあります。
年払い・一時払いの契約も月換算して、他の固定費と同じ表に載せる
保険料だけを単独で見ても高いか安いかは判断できません。通信費や水道光熱費、サブスクを含めた固定費全体のなかでどれくらいの比重かを見ると、手をつける順番が決めやすくなります。固定費の洗い出し方は固定費の一覧を作る手順にまとめているので、まだ全体像が出ていない方はそちらから始めてみてくださいね。
何のために入ったかを思い出す
金額が出たら、次は目的の確認です。「なんとなく不安だから」「職場に来た担当者にすすめられて」で入った契約は、当時の家族構成や収入のままの設計で止まっていることがあります。子どもが生まれた直後に決めた保障と、上の子が高校進学を控えている今の必要額は、同じではありません。
ここで役に立つ問いは一つです。その出来事が起きたとき、家計は保険なしで立て直せるか。立て直せない金額なら保険で備える意味があり、貯蓄から出せる金額なら、保険料を払い続けるより貯めておくほうが自由に使えます。
貯蓄で足りる部分と足りない部分
入院や手術のように、数万円から十数万円で収まることが多い出費は、生活防衛資金があれば現金で対応できます。一方で、世帯の稼ぎ手が長期間働けなくなる、あるいは亡くなるといった事態は、貯蓄で埋めるには金額が大きすぎます。起きる確率は低いけれど、起きたら家計が元に戻らないものほど、保険が向いている領域です。
逆に言えば、月々の保険料を払ってまで数万円の出費に備えているなら、その分を貯蓄に回したほうが使い道は広くなります。どちらが正解ということではなく、「わが家はどこからを自力で払える範囲とするか」を先に決めておくと、契約ごとの要不要が判断しやすくなります。
公的な制度でカバーされる部分
民間の保険を考える前に、すでに保険料を払っている公的な制度でどこまでカバーされるかを知っておくと、必要な上乗せ額が見えてきます。会社員・自営業を問わず健康保険には高額療養費制度があり、1か月の医療費の自己負担には上限が設けられています。
この上限額は2026年8月から段階的に引き上げられました。年収の目安が約370万〜770万円の区分では、月額の上限が従来の80,100円+医療費に応じた加算から85,800円+加算に変わり、あわせて年間の上限(この区分では53万円)が新しく設けられています。直近12か月に3回以上上限に達した場合の「多数回該当」は、年収約200万〜770万円の区分で44,400円が据え置かれました。区分は年収で細かく分かれるため、自分の世帯がどこに当たるかは加入している健康保険組合・協会けんぽ等の案内で確認してください。
会社員であれば、病気やけがで働けない期間に給与のおおむね3分の2が支給される傷病手当金があります(最長1年6か月)。ただし、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には、原則この傷病手当金がありません。同じ「働けなくなったとき」でも、必要な備えの大きさが働き方によって変わるのはこの差が理由です。遺族年金も、加入している年金の種類や子どもの有無で受け取れる金額が変わります。
公的制度で守られない出費もあります。
高額療養費の対象外になる主な費用
差額ベッド代(希望して個室等に入った場合)/入院中の食事代の自己負担分/先進医療にかかる技術料/通院の交通費や家族の宿泊費
入院が長引いたときに家計に効いてくるのは、実はこのあたりの費用と、看病のために働けなくなる分の収入減です。医療保険を検討するなら、治療費そのものより「制度でカバーされない周辺の出費」を基準に考えると、必要な日額の見当がつきやすくなります。


見直しで金額が動きやすいところ
整理が済んでから契約を見ると、金額が動きやすいポイントはだいたい決まっています。ひとつは保障の重複です。勤務先の団体保険や共済に入っているのに、同じような医療保障を個人でも契約している、というケース。もうひとつは特約で、加入時に一式ですすめられたまま、内容を把握していない小さな特約が積み上がっていることがあります。
更新型の契約も要注意です。10年ごとなどの更新のたびに、同じ保障内容でも年齢に応じて保険料が上がります。40代・50代での更新で金額が跳ね上がり、慌てて見直す人が多いのはこのためです。手元の証券に「更新型」「◯年更新」と書かれていないか、次の更新がいつで、そのとき保険料がいくらになるかは確認しておく価値があります。
わが家は、この整理をしたときに夫の死亡保障が勤務先の団体保険と重なっていることが分かり、個人契約のほうの保障額を下げました。加えて、内容を説明できない特約を外しています。月13,000円台だった保険料が7,300円になり、年間で約6万円変わりました。中学生の子がいる今は塾代のほうが重いので、浮いた分はそのまま教育費の口座に回しています。
保障を減らす・解約する判断は、新しい契約や健康状態の確認が済んでから行ってください。解約が先だと、持病などを理由に入り直せなくなることがあります
ここまでやらなくてもいい、という線引きも書いておきます。すべての契約を並べ直して最適化する必要はありません。金額が大きい契約から順に、更新型かどうかと保障の重複だけ見る。それだけでも動く家庭は動きます。全部を完璧に理解しようとすると、手が止まったまま毎月引き落としだけが続いてしまうので、大きいものから一つずつでいいですよ。
相談窓口をすすめられたときに気をつけること
保険の無料相談窓口は、相談者からお金を取らない代わりに、契約が成立したときに保険会社から支払われる手数料で運営されています。仕組み自体は珍しいものではありませんが、無料であることと中立であることは別だ、という前提は持っておいたほうがいいところです。
相談の場では、その日のうちに結論を出さないのが安全です。提案を受けたら一度持ち帰り、提案書に書かれた保険料の総額(払込期間×月額)と、なぜその保障額なのかの根拠を家で確かめる。取扱会社が何社あるか、比較のなかからその商品が選ばれた理由は何か、この2つを質問して、答えが具体的かどうかで判断材料が増えます。公的制度の話が最初に出てくるかどうかも、ひとつの目安になります。
提案されたら「今日は決めません」と最初に伝えておくと、話が落ち着いて聞けます
お金の相談窓口全般との付き合い方はお金の教室(第9回)で扱っています。相談前に自分の家計データを整理しておくほど、話が具体的になって時間も無駄になりません。
どの保険がいいかはここでは決めない
この記事では、具体的な商品名や「この保障はいらない」といった判断は書きません。必要な保障は、家族構成・働き方・貯蓄額・健康状態・勤務先の制度で大きく変わり、同じ年収の家庭でも答えが違うからです。家計ブログの記事が代わりに決められる種類のものではありません。
この記事でできるのは、相談に行く前の下ごしらえまでです。月いくら払っているか、何のために入ったか、公的制度でどこまで足りるか。この3つが手元にあるだけで、窓口での会話は「おすすめを聞く」から「わが家の不足分を埋める」に変わります。個別の商品選びや税・社会保険の計算は、保険会社の窓口や有資格の専門家、加入している健康保険・年金の公式窓口で確認してください。
まとめ|金額より必要かどうかを先に決める
保険料は固定費ですが、電気やスマホのように「同じ内容で安いほうに替える」だけでは終わりません。保障の中身が変われば、いざというときの家計の受け止め方も変わるからです。だからこそ、安くする話の前に、必要かどうかを決める順番になります。
今日できるのは、契約の書類を集めて月あたりの合計額を出すところまでで十分です。数字が出たら、更新型かどうかと保障の重複を確認する。そこまで進めば、相談に行くかどうかも自分で判断できます。



わが家は保険料が下がったこと以上に、「何にいくら備えているか」を夫婦で説明できるようになったのが大きかったです。
制度の内容や上限額は改正されることがあります。実際に手続きする際は、加入している健康保険・年金の公式サイトや窓口で最新の内容を確認してください。(本記事の制度に関する記述は2026年8月時点のものです)








