特別費という落とし穴|お金の整えかた教室・第5回

1年分の特別費を書き出した手書きの家計ノート

固定費を見直して、食費の予算も決めた。それなのに、年に何回か家計がガクンと崩れる月がある——第5回のテーマは、その犯人である「特別費」です。特別費に何を入れるか、1年分をどう書き出すか、毎月いくら積み立てておけばいいか、そして家計簿のどこに置けば毎月の予算と混ざらないかまでをお伝えします。

のどか

ここを整えると、家計の「急に落ち込む月」がほとんど消えます。

目次

特別費とは毎月は出ないけれど必ず出るお金

特別費とは、毎月は発生しないけれど、1年のどこかで必ず出ていくお金のことです。車検、自動車税、火災保険の年払い、帰省の交通費、お年玉、冠婚葬祭、家電の買い替え。どれも「今月はない」だけで、なくなるわけではありません。

第3回で扱った固定費は毎月同じ額が出ていくので、通帳を見れば必ず見つかります。第4回の食費や日用品費も、毎月レシートが出るので存在を忘れません。ところが特別費は、出ていかない月のほうが圧倒的に長い。だから家計簿の上では存在しないことになり、実際に請求が来たときだけ「今月は特別だったから」で片づけられてしまいます。

毎月の家計が黒字なのに1年たつと貯金が増えていない家庭は、たいてい特別費が原因です。

毎月2万円ずつ黒字でも、年に37万円の特別費があれば1年で13万円のマイナスです。家計簿は毎月合っているのに残高が減っていく、というときは、腕が悪いのではなく12か月分しか見ていないだけ。特別費は、家計を月単位から年単位に切り替えるための項目だと思ってください。

よく似た言葉に「予備費」があります。予備費は何に使うか分からないお金、特別費は何にいつ使うか分かっているお金です。この二つを混ぜると、車検代のつもりだった残高が知らないうちに外食に消えます。分けておくことに意味があります。

特別費に入れるものを書き出す

「どこまでを特別費にするか」は、家計管理でいちばん迷うところです。判断に困ったら、毎月の予算内で払えるかどうかで切ってください。今月の食費や日用品費の中から普通に出せる金額なら、そのまま毎月の費目で処理します。

毎月の予算をはみ出して家計の帳尻を崩すもの——これが特別費です。我が家では、1回1万円以上かつ毎月は出ないを線引きにしています。友人へのちょっとした手土産は交際費、結婚祝いのご祝儀は特別費、という具合です。金額の基準は世帯の規模で変えて構いません。大切なのは、迷うたびに考え直さずに済む基準を一度決めることです。

年払い・更新料・帰省・冠婚葬祭

まず確実に入るのが、時期の決まっている支出です。自動車税と車検、火災保険や自動車保険の年払い分、NHK受信料の年払い、賃貸なら2年ごとの更新料、住宅を持っていれば固定資産税。ここは金額も時期も分かっているので、書き出すだけで済みます。

次に、時期は決まっているけれど金額が動くもの。帰省の交通費、お盆と年末年始の出費、旅行、お中元やお歳暮、年賀状、子どもの入園入学や進級にかかるお金、七五三などの行事。これらは去年いくらだったかを思い出して書きます。

最後が、時期も金額も分からないけれど確実にあるもの。冠婚葬祭がその代表です。結婚式のご祝儀は3万円前後、香典は関係の近さで変わります。我が家は、年に1〜2件はあるものとして5万円を枠だけ確保しています。使わなければ翌年に繰り越すだけなので、多めに見ておいて損はありません。

ペットのいるご家庭は、ワクチンと健康診断も忘れずに。うちの黒猫のモカも、年に一度の健康診断とワクチンで1万5千円ほどかかります。毎年必ず出るお金なのに、なぜか毎年「そういえば今月だった」と驚いてしまう類の支出です。

家電の買い替えも特別費に入れておく

特別費を書き出す人の多くが抜かすのが、家電の買い替えです。冷蔵庫も洗濯機もエアコンも給湯器も、壊れる日は必ず来ます。それなのに「今年壊れるとは限らない」という理由で予算から外され、いざ壊れたときにボーナスや貯金が削られます。

ここは金額を当てにいかず、毎年一定額を積むものとして扱ってください。10年前後で買い替える家電が家に5〜6台あるなら、1年あたり1台は入れ替わる計算です。我が家は家電の買い替え枠として年6万円を積んでいて、何もなかった年は翌年に繰り越します。3年たてば18万円になり、冷蔵庫が突然止まってもその日のうちに買いに行けます。

家電・住まいの修繕・車のタイヤ交換は、いつかではなく毎年少しずつ積む枠にしておくと家計が揺れません。

なお、賃貸なら住まいの修繕は大家さん負担の部分が多く、持ち家なら自分の負担になります。持ち家の方は、外壁や給湯器の交換まで見据えて枠を持っておくと後が楽です。ただし、ここは急がなくて構いません。まずは家電だけでも枠を作れば十分です。

車検や保険を書き込んだ年間特別費の一覧表

一覧表にすると1年の山が見える

書き出したら、月ごとに並べます。この作業をすると、頭の中で漠然と「たまに出費がある」と思っていたものが、はっきりした山として見えるようになります。

STEP
1年分の予定を思い出す

去年の通帳とカード明細を1年分めくり、1万円を超える出ていきに印をつけます。第2回の棚卸しで作った一覧があれば、それを使ってください。

STEP
月ごとに並べる

1月から12月まで縦に並べ、印をつけた支出を該当する月に書き入れます。時期の決まっていない冠婚葬祭や家電は、いちばん下に「通年枠」としてまとめます。

STEP
金額を入れて合計する

去年の実額を入れ、思い出せないものは多めに見積もります。最後に年間合計を出し、12で割ります。この数字が毎月積み立てる額です。

我が家の一覧表は、実際にはこんな形です。夫婦二人と猫一匹、車あり、賃貸という前提の数字なので、ご自身の暮らしに置き換えて見てください。

時期項目金額
1月帰省の交通費・お年玉30,000円
4月火災保険(年払い)22,000円
5月自動車税34,000円
6月車検(2年分を年割り)50,000円
7月猫の健康診断・ワクチン15,000円
8月帰省・夏の旅行50,000円
10月冬物の衣類・寝具20,000円
12月年末年始・お歳暮・年賀状40,000円
通年枠冠婚葬祭50,000円
通年枠家電の買い替え60,000円
年間合計371,000円

年間37万円あまり。12で割ると月およそ3万1千円です。この表を作った年、私はしばらく黙り込みました。毎月きっちり家計簿をつけて黒字を出していたつもりが、月3万円分の支出を最初から数え忘れていたわけですから。

ここで大事なのは、金額の大きさに落ち込まないことです。この3万1千円は新しく増えた出費ではなく、もともと出ていたお金です。見えるようになっただけで、家計は何も悪くなっていません。

特別費を積み立てるためのお金を入れた封筒

毎月いくら積み立てておくか

積立額の決め方はいたって単純で、年間合計÷12です。我が家なら月31,000円。ボーナスのある家庭は、夏冬のボーナスで年間合計の半分をまとめて確保し、残り半分を月割りにする形でも構いません。ボーナスに頼りきらないほうが、支給額が変わったときに慌てずに済みます。

割り算の結果が、どうしても毎月の家計から出せない額になることがあります。そのときに削るのは食費ではありません。特別費の一覧表そのものを見直します。旅行を1泊減らす、お歳暮の件数を絞る、車検を安いところに変える。特別費は毎月の生活費より減らしやすいというのが、長く家計簿をつけてきて分かったことです。毎日の食事を我慢するより、年1回の旅行の予算を2万円落とすほうがずっと痛くありません。

最初の1年は完璧を目指さない

1年目は必ず見落としが出ます。年の途中で「これも特別費だった」と気づいたら、その都度一覧表に足していけば十分です。2年目からは自分の家の実額が手元にあるので、精度が一気に上がります。

積み立て先は、毎月の生活費と混ざらない場所であればどこでも構いません。生活費とは別の口座に移す、袋に分けて現金で置いておく、どちらでも大丈夫です。我が家は生活費の口座から別の口座へ、給料日に自動振替で移しています。手を動かさずに済む仕組みにしておくと、忙しい月でも崩れません。

特別費が貯まらない、という相談をよく受けますが、原因はほぼ二つです。生活費と同じ口座に置いていることと、積立額を実際の年間合計より少なく見積もっていること。どちらも一覧表を作れば自然に解決します。

家計簿のどこに置くと混ざらないか

ここが第5回のいちばんの山場です。特別費を毎月の家計簿の中に費目として入れてしまうと、車検があった月だけ支出が15万円に跳ね上がり、その月の家計簿は何の参考にもならなくなります。翌月に見返しても「今月は車検だったから」で終わってしまい、食費や日用品費の傾向がまったく読めません。

おすすめは、毎月の家計簿には「特別費積立 31,000円」という一行だけを書く方法です。実際に車検代を払った月も、毎月の家計簿の支出は31,000円のまま。払った15万円は特別費の一覧表の側で消し込みます。

毎月の家計簿は「積み立てる」記録、特別費の一覧表は「使う」記録。この二枚に分けるだけで、毎月の家計簿がぶれなくなります。月ごとの比較ができるようになるので、食費が増えた減ったという話も正しく見えるようになります。

家計簿アプリを使っている方は、特別費用の口座を別に登録し、その口座からの支出を月次集計から外す設定にすると同じことができます。アプリによって設定名は違いますが、集計対象から外す機能はたいてい用意されています。

毎月の家計簿の費目そのものをどう分けるかで迷っている方は、家計簿の項目の決め方もあわせてご覧ください。費目を細かくしすぎない考え方をまとめています。

それでも足りなかったときの考え方

葬儀が重なった、車が故障した、想定より修理代が高かった。積立が足りない年は必ず来ます。そのときに真っ先にやってほしいのは、来月の食費を削って埋めようとしないことです。

毎月の生活費から不足分を出そうとすると、暮らしの質が落ちるうえに、たいてい途中で挫折して結局カードのリボ払いなどに逃げることになります。特別費の不足は特別費の枠の中で処理するのが筋です。具体的には、翌年の一覧表から金額を動かせる項目——旅行、お歳暮、衣類の買い替え——を先に削り、それでも足りない分だけを貯金から取り崩します。

貯金を取り崩すこと自体は失敗ではありません。貯金は、まさにこういうときのためにあります。取り崩したという事実を一覧表に書き残して、翌年の積立額に反映させる。それだけで十分です。

逆に、余った年は使い切らずに翌年へ繰り越してください。冠婚葬祭の枠が2年連続で余ることもあれば、3年目に一気に3件重なることもあります。特別費は年をまたいでならすもの。単年で帳尻を合わせようとしなくて構いません。

まとめ|前回・次回

第5回は特別費を扱いました。毎月は出ないけれど必ず出るお金を書き出し、1年分を一覧表にして、12で割った額を毎月別枠で積み立てる。毎月の家計簿には積立の一行だけを書き、使った記録は一覧表の側で消し込む。この形にすると、年に何度も家計が崩れる現象がほとんど起きなくなります。

今日やることは一つだけで構いません。紙を1枚出して、1月から12月まで書いてみる。金額は思い出せる範囲で十分です。全部埋めようとして手が止まるくらいなら、半分埋まった表のほうが役に立ちます。

のどか

この表を作った年の年末、はじめて「12月が怖くない」と思えました。

前回の第4回・食費と変動費の整え方では、毎月の生活費に予算を決める方法をお伝えしました。次回は第6回・口座とお金の置き場所を決めるで、生活費・特別費・貯金をどう分けて置くかを具体的に整理します。今回作った特別費の枠が、次回の話でちょうど収まる場所を見つけます。

特別費と予備費は分けたほうがいいですか?

分けたほうが管理しやすくなります。特別費は車検や帰省のように使い道と時期が分かっているお金、予備費は急な病院代のように何に使うか分からないお金です。同じ財布に入れると、特別費として貯めたお金が知らないうちに日常の穴埋めに消えます。

特別費の口座は生活費と分けるべきですか?

分けることをおすすめします。同じ口座にあると残高が多く見えて、使ってしまうからです。ただし新しく口座を作る必要はなく、使っていない既存の口座を充てても、現金を封筒で分けても構いません。

一人暮らしでも特別費は必要ですか?

必要です。むしろ収入の柱が一本なので、影響は大きくなります。家賃の更新料、家電の買い替え、帰省費、スマホの買い替えあたりを書き出せば、それだけで年間の見通しが立ちます。

なお、税額や保険料は制度改定で変わります。金額を確定させたいときは、お住まいの自治体や契約中の事業者の公式情報でご確認ください。

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