お金を整える作業は、節約から始めません。最初にやるのは「今、どこからいくら出ているか」をただ見ることです。第2回では、通帳とクレジットカードの明細を並べて引き落としを一覧にする「棚卸し」のやり方と、キャッシュレス払いの見落としやすさ、1か月分で足りるか1年分さかのぼるべきかの判断をお伝えします。
のどかここが一番、発見の多い回です
現状把握はどこからいくら出ているかを見るだけ
家計を整えようとすると、たいてい先に「何を削るか」を考えてしまいます。ですが削る候補を挙げる前に、出ていくお金の全体像がないと、判断のしようがありません。第1回でお伝えしたとおり、正しい家計管理に決まった型はありません。型がないからこそ、自分の家の実際の数字が出発点になります。
この回でやることは一つだけです。毎月、自動的に出ていくお金を紙かスプレッドシートに書き出す。それだけです。金額を減らす相談も、プランを乗り換える判断も、今回はしません。棚卸しの目的は「決めること」ではなく「見えるようにすること」で、ここを混ぜると手が止まります。
今回のゴールは、引き落としの一覧が1枚できていることです。


用意するのは通帳とカードの明細
必要なものは、生活費が引き落とされている口座の通帳(またはネットバンキングの入出金明細)と、持っているクレジットカードの利用明細です。紙の通帳がなくてもかまいません。アプリの入出金画面をスクロールするだけでも同じことができます。家計簿アプリを新しく入れる必要も、今の段階ではありません。
夫婦で財布が分かれているご家庭は、まずは自分が管理している口座だけで始めて大丈夫です。全部そろわないと始められない、という決まりを作ると、そのまま何か月も過ぎてしまいます。
引き落としを一覧にする
書き出すのは「日付・引き落とし先の名称・金額・支払い方法」の4つです。分類も、必要か不要かの判定も、この時点ではしません。手を動かす順番はこうです。
通帳またはアプリの入出金画面を、直近1か月分さかのぼって、出金をすべて書き写します。ATMでの現金引き出しは「現金」と1行にまとめて構いません。
口座から出ていくカードの請求は、通帳上では1行の合計額です。カード会社の明細を開いて、その中身を1件ずつ一覧に移します。ここで初めて見える支払いがかなりあります。
それぞれの行に「口座振替」「カードA」「カードB」「電子マネー」などを書き添えます。どの財布から出ているかが分かると、あとで止めたいときにどこを触ればいいかが分かります。
最後に合計額を出します。多くの場合、頭の中の見積もりより多くなります。それが分かれば、この回の目的は達成です。
我が家でこれをやったときは、頭で思っていた固定費より月に4,000円ほど多いという結果になりました。金額そのものより、「思っていた額とずれる」という事実のほうが大事です。
使っていない口座とカードを見つける
一覧を作っていくと、動きのない口座や、明細に何も載っていないカードが浮かび上がります。これも棚卸しの成果として書き留めておきます。
使っていない口座は、置いておくだけで費用が発生することがあります。2026年8月現在、2年以上取引がなく残高の少ない普通預金に対して、年1,320円(税込)程度の未利用口座管理手数料を設ける銀行が増えています。対象になる口座の条件(開設時期・残高・取引の有無)は銀行ごとに違いますし、手数料の新設や改定も続いています。
さらに長く放置した場合の扱いも決まっています。2009年1月1日以降の取引を最後に10年以上動きがない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されます。ただし移管されてもお金が消えるわけではなく、通帳・印鑑・本人確認書類を持って取引のあった金融機関で払い戻せます(政府広報オンライン、預金保険機構)。
カードのほうは、年会費が出ていないか明細で確認します。年に一度だけ引き落とされるので、月単位で見ていると見つかりません。私の場合、5年近く使っていないカードから年会費1,375円が毎年出ていました。
今日は「解約」まで進まなくて大丈夫
口座やカードの整理は、公共料金の引き落とし先や給与振込先が紐づいていることがあります。今日は「解約候補」として印をつけるところまでにして、実際の手続きは紐づけを確認してからにしてください。
キャッシュレスの支払いは特に見落としやすい
通帳とカード明細をそろえても、まだ見えない支払いが残ります。スマホ決済の残高払いや、アプリ内で完結する課金です。
見落としが起きるのは、お金の出口が2段階になっているからです。口座からチャージ、チャージした残高から支払い、という流れになると、通帳には「チャージ○○円」としか残りません。その中身は、決済アプリの利用履歴を開かないと分かりません。オートチャージにしていると、チャージそのものにも意識が向かなくなります。
ですから棚卸しでは、使っている決済アプリの利用履歴も1か月分だけ開いてください。あわせて、スマホの定期購読の一覧(iPhoneなら設定内のサブスクリプション、Androidならストアの定期購入)も確認します。ここは通帳にもカード明細の名称にも表れにくく、月数百円が静かに続いていることがあります。
1か月分で足りるか1年分さかのぼるか
「どこまでさかのぼるか」で迷って始められない方が多いので、ここははっきりさせておきます。
| さかのぼる範囲 | 分かること | 向いている人 |
|---|---|---|
| 直近1か月 | 毎月出ていく固定的な支払いのほぼ全部 | 初めて棚卸しをする人(まずはここ) |
| 直近3か月 | 隔月・季節で変わる支払い、電気代の振れ幅 | 1か月分を終えて余力がある人 |
| 直近1年 | 年会費、年払いの保険料、税金、車検や更新料 | 年単位の出費に心当たりがある人 |
おすすめは、まず1か月分だけ仕上げて、年払いのものだけ1年分をざっと拾うというやり方です。1年分をすべて書き写そうとすると、たいてい3か月目あたりで力尽きます。年払いは金額が大きく、しかも忘れたころに引き落とされるので、そこだけ別枠で拾えば十分です。
なお、1年分を通しで見たくなるのは、たいてい「使途不明金の正体を知りたい」ときです。その場合も、まずは1か月を丁寧に見たほうが早く見つかります。


棚卸しで見つかりやすい無駄
一覧ができると、毎回といっていいほど同じところに引っかかります。よく出てくるのは、無料期間のつもりで始めて課金に移行していた動画や音楽のサービス、機種変更のときに付けた有料オプション、使っていないカードの年会費、そして名称だけでは何の支払いか分からない行です。
明細の名称が「決済代行会社の名前」になっていて中身が分からない、というのはよくあることです。その場合は名称をそのまま検索すると、たいてい何のサービスか分かります。それでも分からなければ、カード会社の問い合わせ窓口で確認できます。
我が家で最後まで残っていたのは、月額490円の音楽サービスでした。年間5,880円です。金額としては小さいのですが、聴いていないものにお金を払い続けていたと分かると、他の支払いも自然と見直す気持ちになります。
サブスクの洗い出しは項目が多くなりがちなので、確認の手順はサブスクの契約を確認する方法にまとめてあります。決済アプリやストアの定期購読まで一気に確認したい方は、そちらをどうぞ。
ここで一つ、線引きを。使っていても月に数回しか出番がないものを、無駄と決める必要はありません。楽しみのために払っているお金は、家計を整えたあとも残していいものです。棚卸しは、削る対象を探す作業ではなく、「自分が何にお金を払っているかを知っている状態」を作る作業です。
数字を見て落ち込まないための構え
合計額を出した瞬間、「こんなに出ていたのか」と気持ちが沈むことがあります。長く家計を見てきて思うのは、ここで続く人と続かない人が分かれるということです。違いは金額の大きさではなく、その数字をどう受け取るかにあります。
この一覧は、過去の自分の点数表ではありません。これから触れる場所が書かれた地図です。多く出ていたということは、それだけ動かせる余地があったということでもあります。
それから、棚卸しの結果を家族に見せるときは、金額だけを渡さないことです。「こんなに使っている」から入ると、たいてい話が止まります。「ここは残したいけど、ここは止めてもいい気がする」という形にすると、相談として進みます。
一覧が1枚できていれば、今日はもう十分です。分類も判定も、次回に持ち越して構いません。
まとめ|前回・次回
第2回でやったことは、通帳とカード明細を並べて、毎月出ていくお金を1枚の一覧にすることでした。カードの請求は中身に分解する、キャッシュレスは決済アプリの履歴まで開く、まずは1か月分と年払いだけを拾う。この3点さえ押さえれば、あとは書き写すだけの作業です。
なお、料金プランや手数料の条件は各社の公式情報で変わることがあります。実際に解約や乗り換えに進むときは、契約中の金融機関・サービスの公式ページで最新の条件を確認してください。



私はこの作業をする日、モカが膝に乗ってきて明細の上で丸くなるので、いつも片手で進めています
前回のお金を整えるという考え方|お金の整えかた教室・第1回では、正しい家計管理に決まった型がない理由と、全12回で進む道すじをお伝えしました。まだの方は先にどうぞ。
次回は、今回作った一覧を使います。お金の整えかた教室・第3回では、書き出した支払いを「毎月決まって出るお金」と「そのつど変わるお金」に分け、どちらから手をつけると効くのかを整理します。一覧は捨てずに手元に置いておいてください。








